伊丹市職員労働組合のブログ

伊丹市職員労働組合の活動の記録

保育所問題をどう考えるか(『地域を支えるエッセンシャル・ワーク』)

伊丹市職員労働組合の今年度の重点取り組みの一つに、エッセンシャル・ワーカーの問題があります。エッセンシャル・ワークを理解するために、山谷清志・藤井誠一郎編著『地域を支えるエッセンシャル・ワーク-保健所・病院・清掃・子育てなどの現場から』を読んでいます。今回は保育所について取り上げます。

伊丹市においても、保育士の人員配置について、現場からたくさんの声があがっています。しかし、本書でも指摘されているように、保育の受け皿となる保育士の人材確保は容易ではなく、保育士が不足している状況です。

本書によると、保育士資格を持っている方でも、約半数は保育士としての就業を希望しておらず、その理由として低賃金や劣悪な職場環境等があげられています。次のようなことは、多くの保育士にあてはまるのではないでしょうか。

保育士の業務については「子どもと遊んでいるだけ」と思われる人も多いが、実際には日誌の作成など、いわゆる「書き仕事」が多い。しかも業務時間中は書き仕事に専念する時間はほぼなく、保育と同時平並行でこなさなければならない。A市をはじめ、食事指導のため昼食も子どもと一緒に食べている自治体では、保育士の休憩時間は実質ほとんどない。子どもの昼寝時間も健康状態や周囲の安全性をチェックする必要があるため、現場の保育士は隙間時間を縫うようにして書き仕事をこなしている。このため、指導計画の検討や保育準備などの業務を持ち帰ってこなす場合も少なくない。(231)

このような過酷な状況においても「保育の質」が求められています。保育の質に関する最近の研究では、「保育者の能動的な学び」のほか、「保育者の待遇改善」や「保育者が心身に余裕を持って働ける職場体制」があげられているようです(234-5)。

さらに、「公立保育所には未来の保育所を創造する使命もある」(238)として、セーフティネットとしての役割も求められています。だからこそ、「そのために必要な人員や財源の十分な確保が今後の公立保育所には必要」(240)と言えるでしょう。

保育士の人材不足等の課題は、保育士の労働環境の悪化に繋がり、利用者に不利益や不便を生じさせることになります。本書で何度も指摘されているように、「課題の解消には保育士の処遇や勤務環境の改善が必要」(250)となります。

そして、「保育所問題を考える際には、まずは「子どものためになっているのか」という点を最も重視する必要がある」(250)と言われていますが、まさにこれは現場で働く保育士の声でもあります。「子どもの視点に立った子どものための保育の実現」(250-1)、伊丹市の保育士の皆さんも、同じことの主張し、そのためにこそ適正な人員配置と職場環境の改善を求めています。私たち執行委員も、この現場の声を真摯に受け止め、当局へ処遇や職場環境の改善を要求していきます。