伊丹市職員労働組合のブログ

伊丹市職員労働組合の活動の記録

「現実」主義の感性と陥穽

今回の選挙について、周囲の話題でよく耳にした言葉の一つに、「現実的」という言葉がありました。「○○は現実的だからよい」「××は非現実的だからよくない」といったものです。公務員が仕事をしていく上で、「実現可能性」=「現実的」ということは確かに重要です。しかし、この「現実的だからよい」という認識が支配的になることは、私たちにとって本当によいことでしょうか。

ここで思い出すのが、丸山眞男「「現実」主義の陥穽」(『現代政治の思想と行動』所収)です。本論文において丸山は、「現実」の特徴を①現実の所与性、②現実の一次元性、③支配権力の選択、という観点から説明しています。

①現実の所与性とは、現実は「与えられたもの」であると同時に、「日々造られて行くもの」であるにもかかわらず、前者の性質が前面に出て、「既成事実」と同じ意味を持ちます。この現実の所与性は、「既成事実に屈服せよ」「現実だから仕方ない」(172)ということになります。

②現実の一次元性とは、現実の多元的構造が無視され、現実の一つの側面だけが強調されることを言います。つまり、「現実的」というのは、「現実のうちのある面を望ましいと考え、他の面を望ましくないと考える価値判断に立って「現実」の一面を選択している」(174)ということになります。

③支配権力の選択とは、「その時々の支配権力が選択する方向が、すぐれて「現実的」と考えられ」(175)ていることを指します。つまり、支配権力に反対することが「非現実的」となり、権力者が望むような方向に社会が向かっていくことになります。

「現実」主義の感性が蔓延するとき、丸山が次のように批判した陥穽に嵌ることになるでしょう。

こうした現実観の構造が無批判的に維持されている限り、それは過去においてと同じく将来においても私達国民の自発的な思考と行動の前に立ちふさがり、それを押しつぶす契機としてしか作用しないでしょう。(177)

私たちはこのような「現実」に従うのではなく、むしろ挑んでいく必要があります。この「現実」を「拒絶」することが、「たとえ一つ一つはどんなにささやかでも、それだけ私達の選択する現実をヨリ推進し、ヨリ有力にする」(177)ことになります。

組合運動を通じて、「現実」と共に闘える仲間をつくっていき、職場を、組織を、そして社会を変えていきたいと思います。